ご挨拶(1)2025年8月18日

この度、第 27 回日本正常圧水頭症学会学術集会を、2026 年 2 月 14 日(土)および 15日(日)の2日間、山形県の天童温泉ほほえみの宿・滝の湯を会場にして開催いたします。15日(日)午後には、天童市市民会館にて、市民公開講座も開講いたします。
私は、医師になってまもなく、黒い表紙で蝶々の絵が印象的な「特発性正常圧水頭症診療ガイドライン第1版(2004年1月刊行)」を加藤丈夫先生から手渡され、「これ勉強してみない?」と言われたのが私の水頭症との出会いでした。医学生が学ぶものは、確立された疾患概念であることがほとんどですし、当時はevidence based medicine (EBM)が広まりつつあった時代の緒でしたので、EBMに基づき診療を整理して示したガイドラインはとても新鮮に感じました。その頃から、私が連れて行っていただいた厚生省科学研究費班会議では、内容がほとんど理解できなかった当時の自分を恥じるばかりです。しかし、石川正恒先生、森悦朗先生をはじめとしたガイドライン作成委員会や班会議の先生方が「疾患概念を整理し、確立させ、よい診療をしよう、そして新たなエビデンスを創出しよう」との情熱を持ち、探究と議論を重ねることを厭わない姿を目撃するという、貴重な経験をさせていただきました。この学術集会の2026年、基礎研究、臨床研究、多くの診療や患者様を囲むスタッフの努力といった、先人達の膨大な積み重ねの上に今日があることを深く感謝いたします。
大会テーマ <Hakim病の疫学・病因・病態> について
山形県では、10年前の第17回本学術集会を内科学第三講座の当時加藤丈夫教授が会長で開催して以来の10年ぶりの開催となり、大変光栄に存じております。本学会のテーマは、「Hakim病(iNPH)の疫学・病因・病態をめぐって」とさせていただきました。(iNPH, idiopathic normal pressure hydrocephalus,特発性正常圧水頭症) 成人の正常圧水頭症の分類改訂と議論を踏まえ、iNPHから名称の改訂“Hakim病”が提案されており、本大会では水頭症分野の医学の未来への期待を込め、大会テーマに本名称も併用いたします。
私ども山形県・山形大学からは2000年から23年もの間積み重ねてきた疫学研究から、Hakim病は高齢になるほど増え、80歳代住民では7.7%に疑われると明らかになっています。また、高血圧、糖尿病、肥満といった一般的な生活習慣病や心血管障害リスク因子が、Hakim病のリスクにもなっています。また、アルツハイマー病やパーキンソン病や関連疾患、脳血管性認知症の患者の中にも、Hakim病や脳脊髄液の異常を併発している場合が偶然よりも多いことがトピックスとなっています。つまり、Hakim病の病態は、高齢になるに従い増える血管障害や神経変性等と互いに影響する可能性が想定されています。また、Hakim病のリスク遺伝子SFMBT1を山形から発表しましたが4)、このリスク遺伝子とは別に家族性のHakim病が世界中にいることはわかっており、これらが関与したHakim病の病態はまだ解明の余地が残されています。
皆様のご参加をお待ちしています
しかしながら、重要なのはHakim病(iNPH)に限りません。ご存知の通り、水頭症の外科学にはじまり、高齢者疾患/認知症疾患/運動疾患等の診断・治療・ケア・リハビリテーション、そして患者様を支える様々な連携システム・疾患啓発などによって、今日までのこの領域の進歩がありました。本集会では、是非とも多くの皆様のご参加、発表、議論をもって明日への礎になりますよう、山形にて皆様をお待ちしております。
第27回日本正常圧水頭症学会 学術集会会長
伊関千書